神経学的所見とは、「神経学的テスト」によってどの部位にどのような障害が存在するのかを判断するために行う簡単な検査結果です。
神経学テストによって、レントゲンやMRI、CTなどを撮影せずに抹消神経障害、脊髄損傷などの障害部位を確認することが出来ます。
例えば、脊髄でも神経根でもその部位の損傷に応じた神経学的所見が得ることができ、損傷している神経の位置を特定することが出来ます。つまり、後遺障害でいえば、神経学的所見に異常があれば、それに応じた神経の損傷があるであろうという事になり、それが画像等で確認できれば12級などの上位等級が認定されるという事になります。
重要な神経学テスト
後遺障害の認定上では、特にこの神経学的所見が重要視されます。さらにその中でも、腱反射は詐病が困難なテストとして、後遺障害の立証という観点においても非常に重要なものになっています。その次に知覚異常と筋力低下といったところです。
ところで、神経学的所見と似た言葉に、理学所見というものがありますが、理学的所見は「医師の五感によって確認できる異常所見」と説明できます。後遺障害の実務では、理学的所見と神経学的所見との違いを理解する必要はないようです。ただ、あえて言うなら神経学的所見は、神経学に基づいた検査によっていられた所見という事でしょうか。
腱反射
しかし、これらのテストを行わずしての後遺障害の申請は、時として大きな損害が発生します。ただ、何が正解なのかという判断は簡単ではないです。たとえば、脊髄神経根に障害が発生すると理論的には腱反射は低下ないし消失するとされていますが、腱反射が正常でも上位等級(たとえばヘルニアで12級)が認定されるときもあれば、4回行ったテストの3回は異常でも、1回だけが正常だった(一貫性の否定)がために上位等級が認定されない時もあり、もちろん、全ての結果で異常となっていても上位等級が認定されない時(整合性の否定)もあるので、神経学的所見は腱反射に執着することなく、その他の検査も踏まえて総合的に判断することになります。
例えば、頸椎のC4/ 5つまり、C5神経根に障害があれば 神経学的所見として「筋力低下」は三角筋及び上腕二頭筋が低下し、「腱反射」は上腕二頭筋が低下、「知覚異常」は上腕外側腋窩(力こぶを作った時の外側)という神経学的所見の異常がでます。これがきれいに揃うと整合性があるという事で後遺障害が認定されます。
神経学的所見の検査時期
また、この神経学的テストをいつ行うか、何回行うか、そのタイミングの正解はありませんが、経時的に確認されることが望まれます。そして、具体的症状に合わせて、症状固定時の神経学テストの結果は、後遺障害診断書等に記載されるのが理想ですが、所見が全く出なかった場合は後遺障害等級の認定戦略上、マイナスとなりうるので然るべき他の対策を考える必要が出てきます。
いずれにしても、月に1回、神経学的検査を行い、全ての整合性のある異常所見が取れれば間違いはありませんが、上位等級を目指す場合は、初診時・2か月後・4か月後・症状固定時(6か月後)くらいは最低でも行いたいです。
ただ、注意点として、後遺障害の認定実務上、上位等級を狙う場合は、医師に対して初診時から症状固定時までを経過的に神経学的所見を書面にしていただく必要があります。しかし、初診時からきちんと定期的に神経学的テストを行っているとは限らないので、たとえば、その書類作成時に、神経学的テストを行っていないのにもかかわらず、「所見なし」としてしまう医師が多いので注意が必要です。検査を行っていない場合は、本来であれば「所見なし」ではなく「未施行」と記載すべきで、これも等級に影響が出ます。
神経学的検査の種類
神経学的テストは、神経学的所見を得るために行う次のような検査の事をいいます。
徒手筋力テスト(MMT)、
知覚テスト、
ジャクソンテスト(jackson test)、
スパーリングテスト(spurling test)、
SLRテスト(staraight leg raising test)、
FNSテスト(femoral nerve stretching test)、
バレーサイン(valleix) 、
腱反射、
チネルサイン(tinel)など、交通事故では「神経学的テスト」と言われているものは数多くあります。
これらの詳細は別ページで説明していきます。
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圧迫骨折の症状固定として、通院先の外科医に後遺障害診断書を依頼しましたが、障害の内容欄に「神経症状は認めない。圧迫骨折を認める。」と記載されていました。
「神経症状は認めない」部分が気になります。11級が認定された場合でも、逸失利益等の交渉で不利にならないか心配です。この部分は訂正してもらったほうが良いのでしょうか。お願いいたします。
>逸失利益等の交渉で不利にならないか心配
ご理解の通り、圧迫骨折のみで神経症状がないとなれば、逸失利益で被害者側としては不利になる事があります。骨の変形だけで何も症状がない場合は労働に影響がないからです。
痛みやしびれがあれば不利にはならないので記載していただいたほうが良いと思われます。
当方は、事故による両肘関節の運動痛は、治療終了後も残っていて、自賠法施行令別表の14級9号(局部に神経症状を残すもの)を求めています。
どのような神経学テストを受ければよいでしょうか。
よろしくお願いいたします。
肘の検査には、
コーゼン テスト(Cozen’s Test)
内転ストレス テスト(Abduction Strses Test)
外転ストレス テスト(Abduction Strses Test)
等がございます。