後遺障害等級表に存在しない後遺症が残った場合は?

後遺障害の基本

自賠責では、後遺障害の等級は後遺障害等級表に基づいて決定されます。

例えば、交通事故が原因で視力が低下し、その視力が0.6以下となった時には「1眼の視力が0.6以下になったもの」として13級1号が認定されことになります。

しかし、全ての後遺症が等級表に存在するものとは限りません。たとえば、聴力障害で最も低い等級は11級ですが、その基準は両耳の平均純音聴力レベルが40dB以上となった場合です。つまり、両耳が静かな住宅街の騒音以上の音の大きさでなければ聞き取ることが出来ない状態よりも悪い状態でなければ、後遺障害は認定されない事になります。

では片耳が全く聞こえなくなった場合でもう片方が健常な場合はどうでしょうか。

片耳が聞こえなくなった場合の一番低い等級は7級です。しかし、これには条件があって、聞こえなくなった耳と反対側の耳の聴力にも平均純音聴力レベルが60dBでなければならないと決められています。60デシベルと言えば、会社事務所程度の騒音です。

つまり、片耳が全く聞こえなくなった場合でもう片方が健常な場合は、そのような基準が後遺障害の等級表には存在しないので、等級には当てはまらないとなります。

しかし、後遺障害では「各等級の後遺障害に該当しない後遺障害であって、各等級の後遺障害に相当するものは、当該等級の後遺障害とする。」という決まりがあります。よって、等級表に存在しない後遺症であっても、自賠責で後遺障害の認定を得る事は可能です。

後遺障害等級表にない、存在しない後遺障害

等級表に存在しない後遺障害が後遺障害と認定される理由としては2つあります。

1、後遺障害等級表には無いが、その基準が別途決められているもの
2、後遺障害等級表にも無く、別途決められた基準も存在しない

1の例として、てんかんでは「発作の発現はないが、脳波上に明らかにてんかん性棘派を認めるもの」は12級とするという隠れ認定基準があります。ただ、これらはある程度予想がつくことです。なぜならば、12級には「局部に頑固な神経症状を残すもの」という認定基準があるからです。

しかし、2の場合は簡単なことではありません。なぜなら、その後遺症について、*自賠責に新しく認定基準を設けさせるというくらいの努力が必要だからです。もちろん、その努力は”原則”として被害者側が行う事です。
(*実際に自賠責に新しい認定基準を設けさせるという事ではありません。)

このような時は、後遺障害の等級を得るために、前述の”努力”によって認定を求めなければなりません。

例えば、交通事故により顔にかなりの外傷を負ったが、治療の効果もあって傷痕も残らなければ痛みなどの神経症状も残らず、腕の良い形成外科のおかげで外見も一般的なものと変わらない顔に戻ったとします。しかし、一見何の障害もおっていない顔だとしても、家族ですら判断できないほど事故前とは別人の顔になってしまったらどうでしょうか。

これに合致する後遺障害の認定基準はありません。もちろん隠れ認定基準にも存在しません。しかも、この例では、治療によって健常者と言えるまでになっており、医学的に立証できるかという後遺障害の一番のポイント以前に、そもそも何が障害なのか?という、そもそも論の問題もあります。

被害者としては許しがたい「別人の顔になってしまった」という事に対する等級を得るには、相当な努力が必要ということができます。

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  1. 松下 より:

    「1、後遺障害等級表には無いが、その基準が別途決められているもの」についてですが、
    そもそも、自賠責自身が労災補償障害認定必携の様に明確にオープンにしていないで、裏でコソコソ「その基準が別途決められているもの」と言われても一般人人分かりません。例えば、動揺関節は労災には明確に「準用」と記載されています。自賠責は表向きは「可動域制限が1/2や3/4のみ」
    専門家の間では裏基準が分かっていても、一般にオープンにされていないことが、違法性を帯びることにならないのでしょうか?
    不思議でなりません。公平性の観点からも問題があると感じますが。

    それと、異議申立書は様式は基本的に自由ですが、添付するものが何が必要かも自賠責は明確にしていません。医師の意見書、照会回答書を添付するようなことが交通事故の書籍には書いてありますが、医師に、意見書、照会回答書の話をすると分からないようです。これは実態とした通常の診断書へ書けば異議申立書としては、改めて後遺症診断書作成まで添付の必要ないと言われました。

    ならば自賠責はキチンと明確にしないのでしょうか? 自賠責後遺症認定は知識がないと専門家に依頼しない以上は加害者任意保険会社ペースで決着してしまう。非常に不合理な組織運用と感じています。労災とは雲泥の差です。

    このような不明確性に法律関係の専門家の立場で、異議を唱えていくことはされないのでしょうか