第3条
自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。
この条文は、自動車事故(交通事故)に関する損害賠償責任について書かれています。一般的な損害賠償責任は民法709条と715条を根拠にしますが、自動車事故では、民法の特則としてこの自賠責法を根拠にする事になっています。
自動車事故の被害者が損害賠償請求を民法を根拠に請求する場合、自動車の運転者によって損害を受けた事、加害者に故意や過失がある事、を被害者側で立証しなければなりません。立証が出来なければ請求をしても裁判では勝てません。加害者は、被害者が立証できなければ傍観しているだけで良い事になります。
しかし、自賠責法を根拠にする場合、単に自動車の運行によって発生した損害だけを立証すれば良い事になります。
すると、今度は加害者側は傍観する事が出来ず、いわゆる無責の3条件を立証しなければ、賠償責任を負う事になります。条文上規定されているこの無責の3条件を簡単に説明します。
自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと
常識的に当たり前の注意をしていた事や確実に法律を守っていた事を説明します。
被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があったこと
つまり、不可抗力の立証が出来なければ、加害者として責任を負う事になります。
自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかったこと
基本的には車検の通る自動車と考えられます。つまり、保安基準や各種法令に違反していない事です。そして、日常点検では確認できない障害も含むと考えられます。
なお、民法を根拠にした場合、原則として運転者のみにしか損害賠償請求はできませんが、自賠責法3条の「自己のために自動車を運行の用に供する者」を根拠にその保有者にも賠償請求が出来ます。この「自己のために自動車を運行の用に供する者」を運行供用者といいます。
もちろん、自賠責保険に後遺障害の申請をするには、この条件を満たしていなければなりません。